| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-409  (Poster presentation)

どうやる?淡水ガメの胃内洗浄
Improvement and evaluation of stomach flushing for the freshwater turtles

*宮映日, 木村妙子(三重大学)
*Akihi MIYA, Taeko KIMURA(Mie Univ.)

 食性調査の一手法である胃内洗浄法は、胃に強制的に水を流し込んで内容物を吐き出させる方法であり、爬虫類を含む様々な動物で行われている。この手法は生体をほとんど傷つけることなく、短時間で多くの個体から胃内容物を得ることができるという利点がある。しかし、これまでカメ類の胃内洗浄法の種やサイズによる手法の検討や、有効性の数量的評価は行われたことがない。また、国内のカメ類の食性研究は主に解剖や糞分析により調べられており、胃内洗浄法はほとんど行われていない。本研究では、外来種ミシシッピアカミミガメと在来種ニホンイシガメを用いて、胃内洗浄の手法を検討した。また、胃内洗浄後の胃内残留量の測定から本手法の有効性を検証した。
 本研究では、Legler(1977)のカメ類の胃内洗浄法をもとにした。Leglerはシリンジを用いて胃へ水を注入したが、本研究では水道からチューブで連続的に水を注入した。手法の検討のため、個体ごとに背甲長と挿入したチューブの太さと長さおよび得られた内容物の湿重量を測定した。有効性の検証のため、アカミミガメについては胃洗浄後の一部の個体を解剖して、胃内残留物の湿重量を測定した。
 手法の検討の結果、2種とも胃内容物を得ることができた。イシガメはアカミミガメより活発に動くため、保定には輪ゴムを用いた。2種とも背甲長が大きくなるにしたがってチューブを太く、挿入長を長くする必要があった。有効性の検証の結果、アカミミガメは157個体中142個体から最大10.2gの胃内容物が得られた。解剖した38個体中9個体からは、残留胃内容物が確認され、残留重量割合は平均9%であった。この結果から、胃内洗浄法を実施したアカミミガメの9割以上から胃内容物が得られ,約8割のアカミミガメから胃内容物の全量を得たことが明らかになった。一方、イシガメからも13個体中9個体から最大4.3gの胃内容物が得られ、保全の必要な種についても有効な手法であることが明らかになった。


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