| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-419  (Poster presentation)

里山の畦畔における除草剤散布および火入れ処理が土壌動物群集に与える影響
Effects of herbicides and burning on soil animals in paddy levee

*古郡憲洋(新潟大院・自然研), 岸本圭子(新潟大・佐渡自然共生), 本間航介(新潟大・農)
*Norihiro FURUKORI(Grad. Sch. Sci., Niigata Univ.), 圭子 岸本(Niigata Univ, RSTER), 航介 本間(Agric., Niigata Univ.)

水田畦畔は,生物のハビタットとしての機能や水田と周囲の景観要素を接続する機能を持ち,双方の景観要素の隣接面における様々な相互作用(例えば,リターの分解による畦畔から水田内への栄養塩供給)により里山の生態系機能の維持に貢献している.本研究では,畦畔における人為攪乱が微少環境要因,土壌動物群集,物質循環機能に与える影響を定量化し,これが里山の生態系機能に与える影響を検証した.
新潟県佐渡市キセン城に新潟大学が造成した棚田復元ビオトープの畦畔に,火入れ処理区(BT),除草剤処理区(HT),コントロール区(CT)を3区ずつ整備した.各実験処理は,2019年7月から9月にかけて計3回行った.各実験区内に,5m間隔で1m×1mのサブプロットを3地点ずつ設置し,①土壌水分量,リター量,pH,ECの測定,②ハンドソーティング法とツルグレン装置を用いた土壌動物の採集(食性の異なる6つの機能群に分類),③ベイトラミナー法による有機物分解実験を実施した.調査は,最初の実験処理の前後および最後の実験処理から10日間経過後の計3回実施した.
リター量は,各実験区で異なる変動傾向を示し,BTでは最初の実験処理直後に他の実験区と比較して値が有意に低かった一方,HTでは実験処理を重ねることで値が徐々に減少した.また,リター量の低下は地表面付近に分布が集中する大型土壌動物(特に,リター層をハビタットや餌資源として利用する捕食者およびシュレッダー)の個体数密度に負の影響を与えることが示唆された.一方,地表面から地中(深さ1m付近)まで分布することが知られる中型土壌動物は,大型土壌動物と比較して各実験処理の影響が小さく,その個体数密度が維持されていた.また,本研究では,実験処理による有機物分解率の変化はみられず,これは各実験区の地下部に中型土壌動物(特に,ササラダニ亜目等のデコンポーザー)の個体数密度が維持されていたことに起因すると予測された.


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