| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-425  (Poster presentation)

東アジア放牧草原におけるダストの発生予測に対する植生の指標としての粗度の有効性
Effectiveness of roughness length as a vegetation indicator on dust emission in East Asian rangeland

*甲野耀登, 大黒俊哉(東大・農)
*Akito KONO, Toshiya OKURO(The Univ. of Tokyo)

風送ダストの予報モデルにおいて地表面の各受食性要素、とくに植生とダスト発生のメカニズムとの関係が未解明であり、発生の推定精度向上にむけた知見の蓄積が求められている。植生のダスト発生に影響を及ぼす要素としては、植被率や群落高、種組成、枯れ草などが挙げられている。一方で多くの研究で植生の指標として植被率もしくは群落高が使われており、その他の要素については十分に検証されていない。発生の推定精度向上を目指す上では、植被率以外も含めた各要素の影響およびそれらの総合的な影響の検討が必要である。本研究においては、植被率および群落高がダスト発生に及ぼす影響を検討し、また植生を代表する値としての空気力学的粗度の有効性について検証した。
本研究では、2019年4月から5月にかけてモンゴル国ウムヌゴビ県ツォグトオボーにて、植生調査およびダスト観測等の現地調査を行った。植生調査では出現種、植被率、群落高等を記録した。ダスト観測においては圧電飛砂計(ud-101)を用いた飛砂粒子数の測定、および3高度における風速・風向・気温等の気象観測を行った。3高度における風速から最大相関法を用いて粗度、地面修正量、摩擦速度を推定した。またダスト観測・気象データから、飛砂フラックス、臨界風速を算出した。
臨界風速に対し、植被率および群落高は明確な傾向を示さなかった。一方粗度の増大に伴い臨界風速は増大する傾向を示した。一般に植被率の増大、群落高の増大は飛砂発生を軽減するとされているが、本対象地のような植生が疎らで不均質に分布しているサイトにおいては植被率・群落高はダスト発生を十分に説明しないことが示唆された。一方空力学的粗度はダスト発生に直接影響する風速の垂直分布より算出され、ダスト発生をより説明しうることが示唆された。


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