| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-426 (Poster presentation)
砂丘再活動が問題となっている北東アジア乾燥地の草原では、風食抑制と砂丘固定を促進するための植生回復技術が求められている。風食抑制の効果は一般に植被率が大きいほど高まることが知られている。また植物の分布も受食性に影響を与えると考えられているが、植被が与える風食抑制への影響について分布も考慮されている研究は少なく、植物の分布と風食抑制との詳細な関係は明らかになっていない。そこで本研究では、現地で緑化植物として用いられている灌木を対象とし、灌木の分布が異なる複数の砂丘地で飛砂量を同時観測することで、灌木の分布が風食抑制に与える影響を把握することを試みた。
まず対象種となる灌木が優占している砂丘地を複数選定し、調査区を設置した。各調査区で植生調査を行い、圧電飛砂計による飛砂数の測定、携帯型風向風速計による簡易気象観測を行った。調査区内の灌木の分布の影響も考慮して1調査区内に3機の圧電飛砂計を設置し、調査区内の灌木の位置を記録した。調査区全域で同時に観測されたダストイベントごとに飛砂粒子数を求め、植被率との対応について検討した。調査区の灌木の分布について把握するために調査区ごとに裸地面の距離とセミバリオグラムから灌木の分布を把握した。また調査区内に設置した圧電飛砂計間での飛砂発生方向の比較、飛砂発生方向と風向との対応についても検討した。
その結果、全体として植被率が増加すると飛砂粒子数も小さくなり、特に植被率が20%を超える調査区では大きなイベントはほとんど観測されなかった。空間的不均質性は、植被率が大きい調査区で小さくなり、植被率が小さい調査区では大きくなった。また調査区内ではイベントによって飛砂を大きく観測している飛砂計が異なり、飛砂計の風上方向に灌木がある場合に飛砂の発生が抑えられていた。以上より風食抑制の効果は灌木の分布によって異なることが示唆された。