| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-427 (Poster presentation)
シアノバクテリア等の作用を通じて乾燥地表面で形成されるバイオクラストには土壌養分蓄積等の効果が確認されている。クラストの発達には時間を要するとされるが、緑化技術の適用によりその発達が促進されることが判明している。しかし各種緑化技術間での効果の差異に関する検討はいまだ僅少である。本研究では異なる緑化技術を適用した施工地でバイオクラストの被度や理化学性を比較し、単独または複数の緑化技術の適用がクラスト発達に及ぼす効果の差異を検討することを目的とした。研究は中国フルンボイル市ガンツールで行った。ここでは流動砂丘固定のため灌木植栽や草方格設置等が行われている。マメ科灌木(Caragana microphylla)が優占する砂丘地の草方格設置箇所と非設置箇所に10m×30mの大きさでそれぞれ3サイトを設けた。灌木の植栽形状に合わせ、各サイトに1.5m×1.5mか1m×2mの調査区を10個ずつ設置し、各調査区内で灌木の平均幅と高さ及びクラスト被度を測定した。高被度のクラストが確認された調査区を各サイトから5つずつ選び、クラスト本体、その直下土壌5cm、クラストのない土壌5cmを別々に採取し、全炭素量と全窒素量を測定した。クラストの被度、炭素量、窒素量を応答変数、灌木体積と草方格の有無を説明変数とした一般化線形モデルを作成したところ、被度は草方格と正の相関を、灌木と負の相関を示し、炭素量と窒素量は草方格・灌木共に正の相関を示した。草方格は物質供給を通じてクラスト内の養分増加に寄与したと考えられた。一方、灌木はリターの過剰な堆積によるクラスト内生物の死滅と物質供給を引き起こしたと考えられたが、植栽直後はリターが少ないためクラスト発達に正の効果をもたらしている可能性がある。クラスト本体、その直下土壌、クラストのない土壌を多重比較により比較すると、クラスト中の炭素量と窒素量が他の土壌よりも有意に多かった。表層土壌のほとんどの養分はクラストに蓄積することがわかった。