| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-428  (Poster presentation)

都市生態系における生産緑地の役割
The Role of Productive Green Land in Urban Ecosystems

*大畑聖一郎, 大澤剛士(首都大学東京大学院)
*Seiichiro OHATA, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ.)

土地利用の変化は自然環境の変化を引き起こす最も大きな要因の一つであり、急速な都市化は世界規模で生物多様性の危機をもたらしている。特に日本を含む先進国の多くでは、都市化による大幅な土地利用変化により緑地の減少が起こっており、それに伴う生態系プロセスの変化や生物多様性を基盤とする生態系サービスの喪失が課題となっている。自然環境が限られた都市域において生物多様性の維持・向上を効果的に図るには、残された生育・生息拠点の保全とそれらを結ぶ回廊・中継地の有機的な連結性の確保が有効である。先行研究では、パッチ状の樹林地間の緑道等による連結や樹林地周辺の農地・草地の存在により、樹林地における鳥類の種多様性が上がることが分かっている。また、移動能力の低い歩行虫類にとっては農地が生息空間そのものとして機能しており、都市における農地は面積や自然性が限定的とはいえ貴重なハビタットと考えられる。市街化区域内の農地は生産緑地法に基づく生産緑地とそれ以外の農地に大別される。1992年から現在にかけて、市街化区域内に存在する生産緑地以外の農地は約6割減少しているが、30年の営農義務と税制優遇を受ける生産緑地は概ね保全されてきた。しかし、生産緑地の約8割が2022年に指定期間満了を迎え、「2022年問題」として緑地の減少が懸念されている。本研究では、全国の生産緑地の3割を有する東京都のうち世田谷区内の都市公園6か所を対象に、都市生態系において都市農地が小型昆虫類および草本の移動中継地・生息空間としてどのように機能しており、生産緑地の減少によって想定される影響について検討する。


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