| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-429 (Poster presentation)
世界各地での森林生態系の劣化に伴い、森林を再生する試みが活発化している。多くの自然林再生では、原生林に代表される森林を目標とするため、外来種は排除の対象となる。しかし、外来種の根絶は現実的でないだけでなく、外来種が在来種の生息地や餌資源の役割を担うことも近年指摘されている。したがって、自然林再生の効率化に外来種が貢献する可能性が考えられるが、応用生態学の視点から外来種の可能性を検討した研究は不足している。そこで本研究では、本州自生のカラマツが過去に植栽された北海道・知床国立公園の森林再生地を対象に、在来種の成長・更新の観点から、外来種の自然林再生における役割を明らかにすることを目的とした。
まず、航空機LiDARデータからカラマツと在来種の人工林の樹高を算出し、林分・単木レベルでカラマツ林の防風機能を検証した。次に、5つの森林タイプ、防鹿柵内外での毎木調査から、稚樹と実生に着目し、カラマツ林の更新適性を検討した。また、森林タイプごとの林床の環境特性を抽出した。
その結果、カラマツ林分は他の林分よりも樹高が高い傾向があり、防風林として機能し得ることがわかった。さらに、カラマツ林から離れるほど単木の樹高が低くなる傾向があった。したがって、カラマツ林の防風機能は在来種の成長を促進すると考えられた。また、カラマツ林内では、他の森林タイプよりも多くの個体数、天然林に類似した種組成の更新が見られ、特に防鹿柵内で多種が更新し、柵設置の効果が顕著に表れていた。さらに、カラマツ林の林床では、更新を妨げるササが少なく、天然林よりも多くの更新バンクが存在した。このような環境特性により、カラマツ林は在来種の更新適地となり得ると考えられた。以上より、国内外来種カラマツが短中期的に自然林再生に貢献することが示唆された。外来種をすべて排除するのではなく、それらを活用する生態系復元のあり方を検討する必要があるだろう。