| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-436 (Poster presentation)
菌類は生態系において分解者としての役割を担っている。中でも落葉分解菌は、落葉を食物かつ住み場所として利用する菌類の機能群である。リグニンを選択的に分解する選択的リグニン分解菌の定着を受けた落葉は白色化し、落葉の漂白と呼ばれる。近年、気候帯の異なる樹木の落葉の漂白に関わる菌類のリグニン分解についての研究は多くあるが、特定の樹種の落葉の漂白やリグニン分解についての研究は少ない。また、今回使用したサンプルであるクリ落葉には白色部、褐色部、黒色部の3部位がみられるが、黒色部については現状調べられた例はない。本研究では、同志社大学八丁山校地自然環境研究室周辺で採取された白色部、褐色部、黒色部がみられるクリ落葉を対象とし、クリ落葉の3部位から出現した菌類を同定し、白色化や黒色化を起こす菌類を判別することと、3部位のLMAを計算することで重量を比較し、3部位の難分解性高分子化合物の化学組成を比較することを目的とした。2019年6月22日にクリ落葉の採取を行い、3部位ごとで直径6 mmのリーフディスクを作成し培養した。培養を行うことで分離された82菌株をDNAバーコーディングにより同定し、滅菌したクリ落葉を分離された82菌株に接種することで白色化、黒色化を起こす菌類を判別した。また、3部位の重量を比較するために、菌類の分離とは別に作成した直径6mmのリーフディスクの重量と総面積を測定しLMAを求めた。さらに、3部位における難分解性高分子化合物の化学組成を比較するためにLMAの測定に用いたサンプルを粉末にし、FT-IRを用いることで評価した。その結果、白色化を起こす菌類が12種、黒色化を引き起こす菌類が1種確認され、白色化を起こす12種の内、褐色部から1種、黒色部から1種が確認された。また、3部位のLMAの値から重量が異なることが示され、リグニンの化学組成の違いは白色部と黒色部にのみみられた。