| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-437  (Poster presentation)

琵琶湖水系における細菌群集の機能多様性の定量的評価
Quantitative evaluation of functional diversity of bacterial communities in the Lake Biwa watershed

*井戸基博(龍谷大学)
*Ido MOTOHIRO(RYUKOKU Univ.)

 微生物は、地球上の物質循環の役割を担っており、生態系ネットワーク構造の理解をする上で重要である。しかし、物質循環に関わる微生物の生態の理解が十分には進んでいない。琵琶湖では、水位管理施策の変更に伴う生態系ネットワーク構造の改変が種多様性減少の主要因の一つである可能性が示唆されており、生態系ネットワークの改変が湖沼生態系の機能をも変化させる可能性がある。そこで、本研究では、琵琶湖と空間的に離れた所に位置する4つの主要な流入河川間で細菌群集の機能多様性に焦点を置き、琵琶湖に対する流入河川の影響度の評価を行うことを目的とした。
 琵琶湖と姉川・愛知川・日野川・野洲川の4つの流入河川の細菌群集を調査対象とし、2019年7、8、9、10月の計4回調査を行った。炭素の利用パターンの分析法の代表例としてエコプレートを用いた培養実験を行った。本研究では、31種類の有機炭素基質の入った96ウェルマイクロプレートにサンプルを接種し、2週間培養を行い、吸光度を測定した。それらのデータを用いて、分解能の多機能性をquantile-based multifunctionality法で求めた。河川において、定常的かつバイオマスが大きい細菌種によって分解が担われている基質と、琵琶湖において、非定常的かつバイオマスが小さい細菌種によって分解が担われている基質を河川から流入してくる細菌によって分解されていると定義し、その基質数を用いて河川間での影響度の評価を行った。
 その結果、琵琶湖と流入河川間で多機能性に有意差が見られなかった。また、影響度についても河川間で有意差が見られなかった。影響度の差が見られなかったが、エコプレートを用いた培養実験は局所群集間の移動分散を理解することができる評価手法となり得る。しかし、琵琶湖流域の細菌群集の研究だけでは、生態系ネットワーク構造を理解することは困難であるため、一次生産者や二次生産者、高次生産者などについても機能多様性の把握をする必要がある。


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