| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-438 (Poster presentation)
コクチバスMicropterus dolomieuは日本の湖や河川に移入していることが知られており、在来の生物群集に大きな悪影響を与えていることなどから、「特定外来種」に指定されている。しかし、日本の河川中流~下流域における食性の研究は事例が少ない。そこで、本研究では木津川下流域におけるコクチバスの胃内容物を解析することを通じ、木津川下流域におけるコクチバスによる捕食の影響を把握することを目的とした。
2019/6/18~8/9にかけて計9回、淀川支流の木津川の下流域約7㎞の区間においてコクチバスと餌資源の採取を行った。この区間は砂河川としての特徴が顕著な区間である。解析は主にIRI(餌料重要指数)を用いた。
本調査におけるコクチバスの胃内容物の%IRIでは魚種不明の仔稚魚(推定体長4~10㎜)が最も高い値(50%)を示しており、魚種の判明した魚類と合わせた魚類全体でみると51%に及んだ。これより、木津川下流域におけるコクチバスの主餌料は魚類であると考えられる。また、体長30㎜よりも大きい個体は体長50~60㎜を除いて魚類の%IRIの値が特に高い(63~100%)ことが分かった。これより、木津川下流域のコクチバス当歳魚は体長30㎜という比較的早い段階から魚食に移行していると考えられる。さらに、体長30㎜以下の個体も魚種不明の仔稚魚を捕食していた。餌資源からオイカワの仔稚魚とニゴイの仔稚魚が多数出現していた点とオイカワとニゴイの産卵時期がコクチバスの3~4週間後に盛期を迎え、産卵する基質・水深・流速等の条件が酷似する点から、この2種は孵化後間もないころからコクチバスから食害を受けていたとみられる。このような食害は木津川流域でのみ発生する現象とは考えにくく、他の同程度の規模の河川中流~下流域環境、特に木津川のように交互砂州が形成されるような砂河川においてはコクチバスが定着すると同様の現象が起こる、または起きている可能性があると言える。