| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-439  (Poster presentation)

戸台川下流域の河川敷における希少植物および外来植物群落の21年間の変化
Changes over the past 21 years in the riverside plant communities of lower of the Todai River

*松野直輝(信州大学)
*Naoki MATSUNO(Sinshu Univ.)

戸台川は仙丈ケ岳を源にする山岳河川であり、石灰岩性の土壌を有す特殊な地域である。この地域にはトダイアカバナのような石灰岩性植物やカワラニガナなどの河川固有植物の生育が確認されており、これら希少種の保全を進めていくべき地域である。そこで本研究では、先行研究(伊藤ほか2001)から21年を経た現在の戸台川での在来種と外来種の分布や群落の現状を把握し、希少種の保全や外来種の管理を検討することを目的とした。
調査地域は戸台川であり、1998年に伊藤らによって行われた植生調査において、外来種の出現種数が最も多かった場所(以下調査区①標高990m~1040m)と、希少植物であるトダイハハコが最も優占し、トダイアカバナも高い優占度を示した場所(以下調査区②標高1085~1120m)を選定した。
フロラ調査は全体の植物相を把握するために行われた。各区画区切りから500mまでを代表として、出現種を記録し、被度、群度、植物高(自然高)を測定した。群落調査および立地環境調査等は各区画の植物群落を把握するために行われた。植生の均一な部分ごとにプロットを基準面積を草本4㎡、低木9~16㎡、亜高木25㎡で設け、出現種を記録し、被度および群度、植物高(自然高)を記録、測定した。立地環境調査は相対光量子束密度を測定した。
聞き取り調査は河川・治山事業の履歴を調べるために天竜川上流河川事務所と南信森林管理署に対して行われた。
これらの結果、調査区①では全出現種111種(外来植物13種)、調査区②では全出現種69種(外来植物7種)全137種(未同定を含む)を確認した。先行研究の結果と比較すると外来植物率や外来種の優占割合が両区において増加した。
フサフジウツギなどの外来種は増加し、生育地の立地環境が変化することで希少種が減少すると考えられた。また、超大規模攪乱によりフサフジウツギ群落が維持されていると推察された。


日本生態学会