| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-440 (Poster presentation)
ムネアカハラビロカマキリ(以下ムネアカ)は、2000年代に入り日本各地への侵入が確認された外来のカマキリである。ムネアカは侵入した地点で近縁在来種のハラビロカマキリ(以下ハラビロ)に顕著な侵略性を示し数年の間に置き換わることが報告されている。愛知県では2014年に初めて豊田市で確認され、隣接する岡崎市においても2017年にその分布が確認されている。 ムネアカがどのような環境から侵入しハラビロと置き換わるのかを明らかにすることは、ムネアカの分布拡大過程の推定や効率的 な防除戦略の検討に必要である。そこで、本調査ではムネアカの侵入の初期段階にある岡崎市において、ムネアカとハラビロの分布を調べ、置き換わりが生じやすい環境を明らかにした。
岡崎市内におけるムネアカとハラビロの分布現状を把握するために、2019年9月~2019年11月に、車を用いて低速走行し道路上のカマキリ類を記録するルートセンサス 、調査者が調査地周囲のカマキリ類を探す定点調査、市民によるカマキリ類の目撃情報の提供を呼び掛ける市民調査を行い、カマキリ類の分布情報を収集した。このうち,最も多くの記録が得られたルートセンサスのデータを用いて、ムネアカとハラビロの発見割合を、発見地点の周囲の森林率、河川からの距離、移動障壁となりうる交通量の多い道路による地理区分で説明するロジスティック回帰モデルを作成し、AICによる変数選択 を行った。市民調査および、定点調査で得たデータはモデルの評価に用いた。
調査の結果、計585個体のカマキリ類を確認し、その内ハラビロが198個体、ムネアカが152個体であった。ムネアカは岡崎市内の北西部から南東部までの広い範囲に帯状に分布していることが確認された。ロジスティック回帰の結果、侵入初期においては、 ムネアカは森林率の低い地域からハラビロと置き換わりやすく、また交通量の多い道路が分布拡大を遅らせる要因となる可能性が示唆された。