| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-445  (Poster presentation)

SSRマーカーで調べた大阪の雑種タンポポのクローン組成の8年間の変化
Eight-year changes in clone composition of hybrid dandelions in Osaka assessed by SSR markers

*長船友紀, 水貝翔太, 伊東明, 名波哲(大阪市立大学)
*Yuuki OSAFUNE, shota SUGAI, akira ITOH, satoshi NANAMI(Osaka city university)

外来種と在来種の交雑により、両親種の生態的特性を持ち新しい環境に適応した雑種が生まれ、移入先で分布を拡大することがある。雑種の分布拡大を防ぐには、雑種の形成から分布拡大のプロセスや生態的特性について理解を深めることが重要である。
日本では、外来のセイヨウタンポポが在来タンポポと雑種を形成することが知られている。無性生殖で繁殖する雑種タンポポは、日本各地に拡がっており、多くの地域ではセイヨウタンポポより雑種の個体数の方が多い。雑種タンポポには成長特性の異なる複数のクローンが存在することがわかっており、異なる雑種クローンが様々な場所に定着することで分布を拡大した可能性がある。そこで本研究では、8年前に雑種タンポポのクローン組成を調べた大阪府とその周辺の10地点を再調査し、クローン組成の変化を明らかにすることで、それぞれの場所に適応したクローンが定着しているかどうかを確かめた。
各地点から約20個体の雑種タンポポの果実を採集し、葉緑体DNAのtrnL-trnF領域の塩基数とフローサイトメトリーで測定したDNA量に基づいて四倍体雑種と三倍体雑種に分類した。8年前に採集した果実の27サンプルも含め、7つのSSRマーカーと4つのEST-SSRマーカーの遺伝子型から各個体をクローンに分け、8年前の結果と比較した。
 その結果、個体数の多いクローンは3つあり、いずれも8年前と同じクローンであった。各地点の主要なクローンの組成は、一部の場所を除いて大きな変化はなかった。8年間でクローン組成が変わった場所では、四倍体雑種のクローンが減り、三倍体雑種のクローンが増えていた。さらに、地点ごとにEST-SSR対立遺伝子の類似した個体が分布していたこと、過去の栽培実験で主要3クローンの成長特性に違いが確認されていることから、各地点には環境に応じて生態的特性の異なる雑種クローンが定着していることが示唆された。


日本生態学会