| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-446 (Poster presentation)
日本の小規模河川では、治水と環境保全を両立させる改修として、河川を拡幅しつつ過去に設置されたコンクリートなどの護岸を撤去する工事が行われることがある。コンクリートの護岸から土の護岸に改修した場合に懸念される問題のひとつが、外来植物の侵入・繁茂である。本研究では、外来植物の優占・侵入しやすい環境の特徴を、水面からの比高に着目して明らかにした。また実際に定着した外来植物を除去した際の植生の変化を植生管理実験により明らかにした。調査は、2004年-2016年に人工護岸を撤去する工事が行われた木戸川(千葉県船橋市)で行った。800 mの調査区間における植物相調査の結果、51科202種の植物が確認され、外来植物の割合は42%であった。ベルトトランセクトによる植生調査の結果、侵略的外来種は水際から洪水時でも冠水しない比高まで、様々な水面からの高さの位置に出現していた。調査地には水面からの比高が80 – 120 cmの場所に平坦面があり、河川の生物多様性保全上の目標となりうる湿地性在来種はそこに多かった。植生管理実験として河川の植生管理に標準的に実施されている刈り取り処理と、外来植物の選択的な除去処理を比較し、在来植物の回復に寄与する効果を検討した。その結果、刈り取りは外来植物の被度の低下をもたらさなかった。外来植物の選択的除去が外来植物の被度の低下にもたらす効果は場所によって異なり、水面からの比高の高い法面の上部では効果が認められず、水面に近い法面下部では有意な低下が認められた。外来植物の種数は、どの場所においても刈り取り区が他の処理区より有意に高かった。すべての植物を刈り取る管理は、多くの外来種に定着の機会をもたらす可能性がある。