| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-448 (Poster presentation)
セイヨウタンポポ (Taraxacum officinale)(以下セイヨウ)と二倍体の在来タンポポとの間に交配してできたとみられる雑種タンポポ(以下雑種)は日本全国に分布していること, 遺伝的に多様であることが分かってきた. 雑種は複数のクローン型のセイヨウが起源の可能性があることから, 雑種の分布拡大過程の解明のためにはセイヨウのクローン型の分布や生育特性を明らかにする必要がある. そこで本研究では, 雑種がほとんど確認されていない北海道においてセイヨウの集団内・集団間のクローン多様性と類縁関係を調べ, セイヨウの分布拡大パターンを推定することを目的とした.
道内8箇所の緑地で, みかけ上セイヨウまたは中間的な形態のタンポポ194個体から, 頭花または瘦果を採取した. 試料から抽出したDNAを用いて, 核ITS領域のPCR-RFLP法とフローサイトメトリーによる雑種判定とマイクロサテライト遺伝子座解析(以下SSR)による個体識別を行い, SSR遺伝子型の類似性からクローン判別と類縁関係を分析した.
雑種判定では, 道内8箇所から雑種は検出されなかった. このことは, 北海道にはセイヨウのみが分布し, 道内では本州からの雑種の侵入や道内での雑種形成が見られないことを示唆した. クローン判別を行ったところ, 個体識別のできた172個体は125のクローン型に分けられた. クローン型の類縁関係を分類したところ, 9~10の遺伝的に近縁なグループに分かれると推定された. またその中には遺伝的距離が近く類似したクローン型が認められた. これらの結果は, 道内のセイヨウには高いクローン多様性があり, いくつかのクローン型には地域性があることを示唆した.