| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-449 (Poster presentation)
【はじめに】外来植物であるセイバンモロコシ(Sorghum halepense)は、草丈が2 m超と大型であり、また密生することから、蔓延すると特に河川堤防管理上の問題を引き起こす。先行研究から、植生と土壌には密接な関係があることが示唆されており、本種の蔓延にも土壌特性が関わっている可能性が指摘されている。本研究では、土壌特性を適切に管理することによって本種の生育を制御することを念頭に、本種の分布と土壌の植物養分可給性との関係を調査した。
【材料と方法】本種が蔓延する筑後川水系の宝満川河川堤防法面において、2018年の5月下旬と8月中旬の2回調査を行った。調査地では、セイバンモロコシはパッチ状に分布しており、生育地と非生育地(合計72地点)それぞれで植生調査および土壌採取を行った。土壌試料は、交換性陽イオン、CEC(陽イオン交換容量)、可給態窒素(80℃、16h水抽出液のCODMn測定値から推定)を測定した。
【結果と考察】本種は、pH(H2O) 5.3以下かつ可給態リン酸(Bray II)80 mg P2O5 kg-1以下の土壌にはほとんど侵入していないことが報告されている。今回の研究から、セイバンモロコシは交換性Caが7 cmolc kg-1以下で塩基飽和度が45%以下の土壌には分布していないことがわかった。これに対して、交換性Na、K、Mgの値は、Mgを除き有意差がなく、3元素ともに生育地と非生育地で値の分布域が大きく重なっていたことから、これらの土壌養分は本種の分布に大きな影響を及ぼしていないと考えられた。可給態窒素は、非生育地で生育地より高かったものの、値の分布域は大きく重なっていた。また、いずれの土壌でも農耕地における目標値(40 mg N kg-1以上)より高い範囲にあったことから、今回の調査地では窒素が十分存在し、セイバンモロコシの分布に影響を及ぼしていなかったと考えられた。以上、土壌の酸性度および可給態リン酸レベルとともに、本研究によりセイバンモロコシは高いCa栄養環境を要求している可能性が明らかになった。