| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-452  (Poster presentation)

小笠原諸島父島の都道沿いにおける外来植物の分布
The distribution of invasive species in Chichijima, Bonin islanad

*江口碧(首都大学東京)
*Aoi EGUCHI(Tokyo Metropolitan University)

 小笠原諸島父島は、東京本土部から南に約1,000 km に位置する海洋島である。父島には様々な固有種が生息しており、それらは独自の生態系を構成しているが、本土との定期船が乗り入れているため、外来種の侵入の機会が他の島と比べて多い。そのため、固有生態系の保全を考える上で、外来種の個体数や分布状況を把握することは必要であるが、父島に生息する草本外来種の分布については知見が限られている。
 本研究では、外来植物の人為的な分布拡大経路の1つと考えられる道路とその周辺環境に着目して、小笠原諸島父島における外来草本植物の分布を調査し、地区による各種の出現頻度や出現種数の差異について検討した。
 小笠原諸島父島にある、都道240号父島循環線沿い3mの範囲に生息している草本植物を約10mごとに記録した。人や車の動きが外来種の分布に与える影響を明らかにするため、周辺環境が異なる地区に分け(①湾岸道路、②夜明道路、③乳頭山斜面、④小港海岸)、地区ごとに各種の出現頻度や地点出現種数を評価し、地区間で比較した。
 その結果、調査した679地点において出現した種数は27種で、1地点あたりの種数は0-9の範囲にあった。4地区の地点平均出現種数は①3.56、②2.00、③3.54、④3.88で、②夜明道路の種数は、他の3つの地区よりも有意に少なかった。出現地点数において、地区により偏りがあったものが12種、偏りなく分布していたものが4種であった。具体例として出現地点数が100地点以上のものを挙げると、オオバナセンダングサ、シマニシキソウは②に、ベンケイソウは④に偏って出現した。コトブキギクは①と③、ホナガソウ②と③に偏って出現した。
 これらの結果から、4つの地区における地点出現種数には差があり、植物種により地区ごとの出現地点数に偏りがあることが明らかになった。地区ごとの植物種の出現地点数と、それぞれの生活史や周辺環境との関係性についてさらに考察する。


日本生態学会