| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-453 (Poster presentation)
近年、外来種による生物多様性の低下が問題視されている。特に北米原産のハリエンジュは繁殖力が強く、在来植物の駆逐といった生物多様性の低下や治水、景観に負の影響を与えていると考えられる。そこで本研究では三峰川下流域におけるハリエンジュの分布と定着群落の状況を把握し、本種が河畔林や河川固有植物群落などの在来植生に及ぼす影響について考察することを目的とした。
ハリエンジュの分布は、調査地域に1辺50mのメッシュを計1147個設置し、樹高1m以上の個体を対象にメッシュ内の有無を記録した。また河川固有植物の群落6地点とハリエンジュ林3地点、ヤナギ優占林3地点の計12地点において植物社会学的手法に基づき、1辺15mのプロットを設置し、高木層と亜高木層の出現種名を記録し、被度と群度、植物高、植被率を測定した。低木層と草本層は同プロットを1辺5mのサブプロット9個に区分し、同項目を記録測定した。
植生調査により、全175種を確認した。不明種を除いた159種を用いてTWINSPAN解析を行い、12地点の植生は5群落型(A~E)に分類された。ハリエンジュは全ての群落型で確認された。第一分割では調査地Y2を除く河畔林と主に草地環境に二分された。第二分割では河畔林群落では上層をカワヤナギが優占する群落型Aとハリエンジュが優占するBに分類された。草地環境群落では出現種数が最多、植被率が最低なEとE以外に分類された。第三分割ではE以外のうちY2のみが含まれるCと河川固有植物の優占度(SDR₂’)が高いDに分けられた。
本地域において本種は多様な環境に侵入定着していた。本種が定着したヤナギ林や草地環境には希少種も確認されたが、今後、ハリエンジュ林に遷移する可能性があり、早急な対策が求められる。また本種以外にもイタチハギやオオキンケイギク等も同所的に確認され、これらの外来植物種に応じた対策が必要である。