| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-454 (Poster presentation)
温暖化の進行は、外来植物の分布や生育・繁殖などに大きく影響することが予想される。特に、南方起源の外来植物については、生育期間の延長や生育適地の拡大が予想され、その結果として生態系への影響がより大きくなることが懸念される。
コセンダングサ(Bidens pilosa var. pilosa)は熱帯アメリカ原産のキク科一年生草本で、畑地や牧草地での栽培作物や在来植物との競合が報告されている。本研究では、コセンダングサ(以下本種)を研究材料とし、温暖化が一年生外来草本の生育・繁殖に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
はじめに、本種の温度に対する休眠性・発芽特性を段階温度法(鷲谷 1997)によって調べた。その結果、発芽可能温度域が12~32 ℃と幅広く、春化処理などの休眠解除処理を必要としないことが明らかとなった。
次に、野外における本種のフェノロジーを調べるため、広島県東広島市(年平均気温:14.2 ℃)と呉市(年平均気温:17.2 ℃)を流れる黒瀬川流域に調査地を設け、2019年11月から2020年1月にかけて野外調査を行い、開花・結実期間と当年種子(2019年10月以降に生産された種子)の発芽の有無を調べた。その結果、両調査地間では開花・結実期間に大きな差は見られず、いずれの調査地においても個体サイズと開花・結実数には正の相関があった。当年種子の発芽についても両調査地で確認されたが、当年生の実生数は呉市の調査地の方がはるかに多く、冬季においても成長していることが確認された。
以上の調査結果から本種は、温暖化によって発芽時期が大幅に早まり、生育期間の延長とそれに伴う種子生産数の増加が予想される。
今後、これまでに明らかになった本種の生育特性と、国内における分布の北限地域の環境条件を考慮し、将来的な分布拡大の可能性についても検討を行う。