| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-456 (Poster presentation)
千葉県は印旛沼水系や、鹿島川水系で定着したカミツキガメの集中捕獲を実施して地域的根絶を目指しているが、その捕獲数は年々増加している。わな捕獲以外の防除手法も検討されているが、繁殖の阻止やメス個体数のコントロールにより効率的にカミツキガメ個体数を低密度にできると考えられる。また、産卵された卵を孵化前に回収することができるならば個体数減につながるだろう。そこで本研究では、ラインセンサスとイヌによる産卵巣探索手法を検討した。
調査地は千葉県印旛沼周辺水域3地区で、カミツキガメ産卵期間の5月下旬から6月下旬にかけて、週1から2日のペースでそれぞれ実施した。あらかじめ決めたルートに沿って探索をし、GPSを用いて探索ルートと発見物等の記録を行った。ラインセンサスは2名1組、イヌは2名+1頭を1組で実施した。ラインセンサスならびにイヌハンドラーはいずれもカミツキガメ産卵巣探索初心者だった。
各調査地予定探索距離に対する実探索距離割合はイヌ111.18~131.67%、ラインセンサス111.05~122.37%、実探索時間はイヌ54.43~105分、ラインセンサス45.57~85.43分だった。同一地区における実探索距離、時間に探索手法の差は認められなかった。探索進度はイヌ・ヒト共に0.02㎞/分、探索開始から最初に関連物等発見(反応)するまでの時間はイヌ11.21分、ヒト17.47分だった。どちらの手法においても産卵巣の発見には至らなかったが、イヌが卵や卵殻、移動跡などを発見した数はラインセンサスより多かった。またこれらは、ヒトの目視で発見が難しい土中、草間や水路の中だった。イヌによる探索では、イヌがカミツキガメ関連臭気に反応・集中的に周辺を嗅ぐことで探索するエリアを絞ることができたことから、ラインセンサスよりも効率的に探索できると考えられる。しかし、産卵巣探索の実用化には継続した調査が必要であろう。