| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-457  (Poster presentation)

自己か非自己か:隣の株の遺伝的特性が外来植物の生産性と繁殖戦略を変えるか?
Self or non-self: does genetic identity of a neighbor affect productivity and reproductive strategy in an exotic plant?

*寺田郁香(北海道大院環境科学), 内海俊介(北海道大FSC)
*Ayaka TERADA(Environ Sci, Hokkaido Univ.), Shunsuke UTSUMI(FSC, Hokkaido Univ.)

外来生物の侵略は生物多様性にとって深刻な脅威となっている。そのため外来生物の定着と分布拡大のメカニズムの解明は必要不可欠である。外来植物の多くは種子による有性繁殖と地下茎などの栄養繁殖体による無性繁殖の両方を行う。一般に植物では二つの繁殖様式間にトレードオフがあると考えられるが、外来植物研究ではトレードオフが検出されないことが多い。これには、外来植物における二つの繁殖様式の発現において、条件依存的で複雑な応答が潜んでいるからかもしれない。そこで、外来植物の同種内の遺伝的変異と自己認識の相互作用が繁殖様式の可変性に作用するという仮説を立て、これを検証することを本研究の目的とした。本研究では、外来植物セイタカアワダチソウを用い、野外での圃場実験によりこの仮説を検証した。
実験では、北海道、本州、九州に分布する8遺伝系統を使用し、1ポットに1個体の単独処理、1ポットに同系統2個体の同系処理、および異系統2個体の異系処理を施し、地上部成長量・バイオマス、開花の有無および推定花数、ライゾームの数・長さを計測し、南北の遺伝系統の効果と処理の効果について調べた。
地上部バイオマスは北系統が南系統に比べて小さかった。しかし、バイオマスには、処理の効果は有意ではなかった。一方、ライゾームの数および長さには、地上部バイオマスの違いを考慮しても、南北系統と処理の間の交互作用が有意であった。北系統では同系処理でライゾーム生産が増加し、逆に南系統では同系処理でライゾーム生産が減少した。異系処理は影響しなかった。花については、北系統が早く開花し、花数は同系処理で単独と差がなく、異系処理で減少した。すなわち、ライゾームと花の生産は、自己・非自己の認識によって促進や制限が生じることが明らかになった。また、北と南系統での応答の違いは、ライゾームと花の生産バランスの緯度勾配が関係していることが考えられた。


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