| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-459 (Poster presentation)
北アメリカ原産のマメ科の落葉広葉樹ニセアカシアRobinia pseudoacaciaは撹乱に大きく依存した先駆樹種であり、潜伏芽に由来する萌芽枝を形成する萌芽能を持つ。また、本種は環境省の生態系被害防止外来種に指定されており、在来の生態系への影響が懸念されている。演者らによる先行研究では多雪山地八甲田山系の本種は寡雪平地の同種に比べて雪害(雪の荷重による樹体の破壊と傾幹)が多発していることが示された(ESJ第66回大会ポスター発表)。
2019年、八甲田山系で発生する雪害についてニセアカシア小径木と在来樹種ダケカンバBetula ermanii小径木において雪害による損傷部位の調査を行った。そして、八甲田山系の両種小径木に加えて津軽平野のニセアカシア小径木も対象とした傾幹幅の推定を行った。またこれら調査に加えて、津軽平野のニセアカシアを対象として雪害を模した剪定処理を2019年2月に行い、同年9月に全当年生シュートの本数と総乾重を測定する野外実験を行った。
調査の結果から八甲田山系においてニセアカシアは同地のダケカンバに比べて損傷部位(損傷した枝や幹)数が多く、被害が大きいことが示された。また、傾幹幅については八甲田山系のニセアカシアは著しく匍匐した樹形をとる個体が多く、損傷部位数と傾幹幅に正の相関が認められた。剪定処理による野外実験では、剪定処理により全当年生シュートの総乾重は変化しなかったが、本数は減少し当年生シュート一本当たりの乾燥重量は増加する傾向が認められた。幹で発生した当年生シュートについてみると樹幹全体で剪定処理による本数の増加が認められ、剪定が萌芽による当年生シュートの発生を促進させたと考えられる。
以上のことから、本研究では多雪山地においてニセアカシアは在来樹種ダケカンバに比べて雪害が多発し被害が大きいこと、そしてその被害に対し幹からの萌芽によって枝の損失を補うように当年生シュート量を調節することで樹体を維持する可能性が示唆された。