| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-462  (Poster presentation)

外来および近縁在来ハムシ2種の幼虫における種間相互作用の検討
Consideration of interspecific interaction between invasive and native chrysomelid larva.

*野村夏希(岐阜連大(静大配置)), 笠井敦(静岡大学)
*Natsuki NOMURA(UGSAS Gifu University), Atsushi KASAI(Shizuoka University)

外来種および近縁在来種同士において生じることがある繁殖干渉, ギルド内捕食, 共通の天敵および餌資源を介した競争のような排他的な種間相互作用は, 一方の種の排除や実現ニッチの改変をもたらす. ヨツモンカメノコハムシ(以下ヨツモン)は沖縄本島以南に自然分布するハムシであり, 2000年に本土への侵入が確認されて以降分布を拡大している国内外来種である. 本種の寄主はヒルガオ科植物全般であり, ヒルガオのみを利用する近縁在来種ジンガサハムシ(以下ジンガサ)と寄主が重複することから, これら2種間においても何らかの排他的な種間相互作用の発生が予想される. そこで、これら2種間に生じる相互作用の実態解明を目的とした野外調査および室内実験をおこなった.
 ヨツモン侵入地である静岡市およびヨツモン侵入の報告がなかった神奈川県南部において2019年に調査をおこなった結果, 静岡市のヒルガオ群落のうち実際にジンガサが生息していたのは半分以下であった. 一方, 神奈川県では4か所中2か所に生息していた. また静岡市の1か所では1齢以降の幼虫が発見されなかったことから, ヨツモン侵入地におけるジンガサの発生は抑制されているかもしれず, さらにその排他的な種間相互作用は幼虫期に生じていることが予想された.
 そこで, 2種の幼虫を同種のみ, あるいは異種同士で飼育し生存率を比較したところ, ヨツモン幼虫とともに飼育したジンガサ幼虫の生存率のみが有意に低下した. ただし, ギルド内捕食は確認されず, 片方にのみヨツモン幼虫を放飼した葉片2枚を用いた選択実験では, ジンガサ幼虫はヨツモン幼虫の存在する葉片を忌避しなかった.
 以上の結果から, ジンガサ幼虫の生存率低下の原因はヨツモン幼虫による捕食やヨツモン幼虫に対する忌避ではないと考えられた. 考えられるその他の要因として, ヨツモン幼虫の摂食による餌資源の改変がジンガサ幼虫の生存率を一方的に低下させることが疑われた.


日本生態学会