| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-469 (Poster presentation)
樹木の個体群構造を調査するには、一定の面積に含まれる樹木を記録するのが一般的である。中でも、未成熟なステージである稚樹や実生は本数が多いため、しばしばコドラート法によって省力的にサンプルされる。しかし、その際にコドラートをどのようなデザイン(大きさ、数)で配置するのが適切かについて明確な方針はない。そこで岩手県奥州市カヌマ沢の渓畔域(3.24 ha)にて、胸高直径1 〜 5cmの稚樹を対象に毎木調査を実施し、そのデータセットから仮想的なコドラートでサンプルするシミュレーションを行った。シミュレーションでは、コドラートの大きさと数がトレードオフの関係にある複数のデザインを想定し、少数の大面積が良いか多数の小面積が良いかといったSLOSS問題(Single Large or Several Small)について検討した。その結果、同じ面積を調査する際に、多数の小さいコドラートを設置する方が少数の大きなコドラートを設置するよりも、群集構造の指標(種数、本数、胸高断面積合計)を過大評価することがあった。これは、複数の小さいコドラートは単一の大きなコドラートと比べて辺の総数が多いため、コドラートのエッジに近い個体を過大にサンプルしてしまう効果が強く現れたことによると考えられる。本発表では以上の結果に加え、調査努力量も踏まえてデザインの違いがサンプリング結果に与える影響について議論する。