| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-476  (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林における林分構造と地形に対する林床植生の応答
A response of understory vegetation to the forest structure and topography in a cool temperate deciduous forest

*平紅樺里, 林田光祐(山形大学・農)
*Akari TAIRA, Mitsuhiro HAYASHIDA(Yamagata Univ.)

 林床植生の機能維持にあたり、里山の手入れ不足は林床植物の多様性に対して脅威とされている。林床植生は林冠層や地形によって異なることが指摘されているが、その対応関係は必ずしも解明されていない。本研究では、林冠層と低木層および地形の違いが林床植生に与える相対的な影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、針葉樹と展葉時期の異なる広葉樹の林冠層、常緑樹とササを含む低木層、尾根・谷を含む斜面地形を条件に、これらの組み合わせと林床植生の対応関係を解析することで、影響を受ける条件の推定とその影響の大小を明らかにすることとした。
 山形県に位置する日本海側要素を含む高館山(標高274m)の自然休養林を調査地とした。調査地で優占して見られた林冠層4タイプ、低木層4タイプ、地形4タイプからなる組み合わせのうち、23組み合わせの計92ヶ所に2m×2mの調査区を設定できた。各調査区内で50cm以下に出現した維管束植物の種名と被度を3季節に渡って記録した。
 全調査区で154種が出現した。目的変数を夏季に記録した種数、説明変数を林冠層・低木層・地形としたGLM結果より、林冠層は影響を及ぼす要因であり、特にコナラが最も種数増に影響した。低木層も影響を及ぼす要因であり、特にチャボガヤが最も種数減に影響した。種数には主に林内の光環境の不均一性が起因すると考えられる。在・不在データを用いたMDSによる類似度の比較では、尾根と谷で明確に異なる集団に分かれたことから、種組成には主に土壌環境が起因すると考えられる。草本種に限定した種数を目的変数としたGLM結果では、林冠のケヤキが最も種数増に影響し、広葉樹林冠別に行った春開花種と低木種の被度合計の平均の比較では、春開花種被度はケヤキで有意に高く、低木種被度は有意に低かった。これらの結果と林冠層の展葉時期をふまえて、林床植生の多様性と環境要因との対応関係を議論する。


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