| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-478  (Poster presentation)

霧島山栗野岳の照葉樹林において地形が植生に及ぼす影響
Influence of topography on vegetation in a broad-leaved evergreen forest on Mt. Kurino, Kirishima Mountains

*荒木小梅(鹿児島大学), 相場慎一郎(北海道大学)
*Koume ARAKI(Kagoshima Univ.), Shin-ichiro AIBA(Hokkaido Univ.)

 地形が植生に影響を与えることはよく知られているが、そのメカニズムは必ずしもよくわかっていない。地形は直接的な環境要因ではなく、土壌条件・撹乱・光環境などを介して間接的に影響を与える。また、近年日本各地でシカの採食圧が植生に大きな影響を与えていることが報告されている。そこで本研究は、土壌撹乱・光環境・シカの採食圧に注目し、地形が森林植生に影響を及ぼすメカニズムを明らかにすることを目的とした。
 調査は九州南部に位置する霧島山栗野岳照葉樹林で行った。1 ha調査区を測量し、10 m四方のサブプロットに分割して毎木調査(大径木・小径木)と下層植生調査を行った。環境要因として光環境(全天写真)・土壌侵食量・大型草食動物(自動撮影カメラ)の調査をした。
 その結果、調査区内の樹木密度は大径木・小径木ともに、尾根が谷より高かった。大径木の幹数上位14種は生育しているサブプロットの地形と種間関係から尾根種10種と谷種4種に分類され、小径木と下層植生でも同様の分布傾向がみられた。光環境は尾根より谷で明るく、土壌侵食量は尾根より谷で大きかった。大型草食動物ではシカが最も多く出現しており、出現回数は谷より尾根で多かった。また、撮影されたシカの約半数が採食行動を行っていた。
 谷は尾根に比べて明るい一方で、土壌侵食量が多いことから、地形による幹密度の差は侵食量の差が原因と考えられる。つまり、谷は土壌撹乱が尾根よりも頻発するため、光条件がよいにも関わらず尾根より幹密度が低い。撹乱が少ない尾根の下層植生被度が低い理由のひとつとしてシカの採食圧が高いことが考えられる。


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