| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-479 (Poster presentation)
土地改変や人口減少に伴う管理放棄によって,草原生植物の減少が懸念されている。土地改変及び人口減少の程度は地域差がある。保全上重要な地域を明らかにするためには,より多くの草原生植物と生育地が残存している地域を明らかにする必要がある。本研究の目的は,高知県の里地を対象に草原生植物の種多様性,生育地数の地域差と環境特性を明らかにすることである。土地利用・土地改変の程度の異なる高知県の里地16地域(久礼野,行川,春野,相川,大豊,枝川,日高,池川,須崎,窪川,梼原,中村,三原,西土佐,安芸,室戸)を対象に草原生植物の分布調査を行った。各地域に100 mのライントランセクトを15本設置し,高知県草原生植物普通種チェックリストで生育地の有無を記録した。種多様性は各地域に出現した種の合計種数,生育地数は平均種数で評価した。土地利用と平均傾斜角度をもとに,種多様性が高い地域の分析を行った。合計種数は,久礼野,三原,枝川の順で多かったが,平均種数は相川,久礼野,三原の順で高かった。これらの結果が異なった理由として,平均種数は土地改変・管理放棄によって低下しやすいことが考えられた。このことから,地域の合計種数に加えて平均種数の多い地域を優先して保全すべきであることが示唆された。草原生植物の出現確率は,中山間地の小規模農地で,人工地面積がやや増加傾向にある地域で高かった。傾斜が緩やかな農地面積の大きい地域で出現確率が低下する理由として,土地改変の影響が考えられる。人工地の増加で出現確率が増加する要因として,管理放棄の程度が低いことが考えられる。回帰分析の結果,草原生植物の種多様性の指標種は,ゼンマイ,ネコハギ,ミツバツチグリなどの種であると示唆された。