| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-482  (Poster presentation)

日本海沿岸域におけるカワヤツメの伝統漁業から産卵場を推定する
Estimating spawning habitat of Arctic lamprey from the historical lamprey fishing culture along the Sea of Japan

*荒川裕亮(石川県立大学), 岸大弼(岐阜県水産研究所), 柳井清治(石川県立大学)
*Hiroaki ARAKAWA(Ishikawa Prefectural Univ.), Daisuke KISHI(Gifu Pref. Res. Inst.), Seiji YANAI(Ishikawa Prefectural Univ.)

 日本国内における内水面漁業は、河川や地域ごとに異なる気候や環境、地形に合わせた独自の伝統漁法で行われる。また伝統漁法は過去における生物種の生息状況や分布域を示す情報であり、今後の保全策を検討する上で重要な価値を持つ。しかし、河川改修に伴い、内水面漁業は衰退しており、その情報が失われようとしている。そこで、本研究は日本海沿岸域で利用されてきた絶滅危惧種であるカワヤツメLethenteron japonicumの伝統漁業に関する情報を収集し、過去の生息状況を評価することを目的とする。特に、カワヤツメの産卵場における漁法に着目して、過去における産卵場の推定を試みた。
 まずカワヤツメが歴史的に漁獲されていた地域を把握するため、農林省水産局により1927-1931年に発刊された「河川漁業」を参照した。その結果,カワヤツメは20世紀初頭、北海道や日本海沿岸の東北地方から北陸地方にかけて漁獲されていたことが明らかとなった。そこで、本研究は本州の日本海沿岸域に着目し、青森県から福井県の内水面漁業協同組合(125組合)へ、カワヤツメの漁獲の有無(過去、現在)と、その方法や漁獲量、漁場について聞き取り調査を行った。その結果、カワヤツメ漁を過去に行っていた組合は125組合のうち、62組合であった。しかし、2020年現在では10組合にまで減少していた。漁獲量は20-40年前と比べ100分の1に減少していることからも、カワヤツメ漁の存続は困難であると推察された。
 またカワヤツメの漁法は、使用する漁具は多様であるが、その特徴から3つ(➀河川本流における定置漁、②河川横断構造物の下流側における漁、③産卵場における漁)に分類された。そこで、本研究は産卵場における漁撈形態に着目し、漁の位置情報と、国土数値情報から得た地形情報(緯度、標高、傾斜度、集水面積)を用いて、MaxEntにより過去の産卵適地の推定を試みた。得られた解析結果については、ポスター発表にて紹介する。


日本生態学会