| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-490 (Poster presentation)
台風などによる大規模撹乱後の森林は、その発達の過程で構造が大きく変化する。大規模撹乱後の森林の発達過程の解明には、個体の動態やサイズ構造、空間分布の時間変化の定量が必要である。本研究では、1959年の伊勢湾台風によって大規模に破壊された森林について、2004年と2019年の間の個体の生残と成長および空間構造の変化を解析した。
調査地は、長野県茅野市の北八ヶ岳山域の亜高山帯針葉樹林で、モミ属のシラビソ・オオシラビソが優占している。2つの50 m×50 m調査区で、2004年に生存した個体(樹高>1.3m、計3290個体)の生死を記録し、生存個体の胸高周囲長(GBH)を測定した。局所的な動態や個体の空間分布を明らかにするために、各調査区を50の10 m×10 mサブプロットに分けて解析をした。
個体数は2004年の半数以下まで減少し、枯死率はシラビソで53.6 %、オオシラビソで88.2 %弱だった。枯死個体の多くは、2004年の胸高直径(DBH)が10 cm以下の小型の個体であり、生存個体のDBHのサイズ分布はL字型から一山型に変化した。同地域の最多で50 ㎡/haと報告された胸高断面積合計は、本研究のほとんどのサブプロッでは、50㎡/haに達しなかった。L関数を用いた空間解析の結果、2004年には、ほとんどのサブプロットで個体は集中分布していたが、2019年には、個体間の距離が2 m以内のランダム分布を示した。
以上より、林分の発達に伴い小型個体の枯死で、個体分布様式が集中分布から一様分布へ移行している段階だと考えられる。しかし、胸高断面積合計が2004年より減少したサブプロットもあり、競争に起因した枯死に加え、鹿食害に起因する非密度依存的な死亡の影響の可能性がある。