| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PD-494 (Poster presentation)
熱帯二次林の地上部バイオマス(AGB)は二次遷移系列に沿って撹乱後数十年で成熟林の水準まで回復するとされてきた。しかし、ボルネオ島の伐採後二次林では、林床や林冠がシダやツルの群生によって被覆される現象が知られ(密集性マント)、二次遷移が長期的に停滞していることが予測される。本研究では、マント被覆が二次遷移のプロセスに与える影響を調べ、これまで注目されてこなかった熱帯二次林動態の実態を解明することを目的とする。
マレーシアサバ州の伐採後20年が経過した二次林において、2014年に半径20 m の円形プロットを17個設置し、DBH 10 cm以上の樹木について毎木調査を行った。2019年に同じプロットで個体の再測定を行った。その際に、プロットの密集性マント被度と各樹木のマント被覆の有無も記録した。得られたデータを基に、密集性マント被度がプロットのAGB回復速度や個体群動態(新規加入、個体の相対成長速度、生存率)に及ぼす影響を一般化線形モデルを用いて解析した。
密集性マントの影響を受けている本研究のプロットの平均AGB回復速度は1.38 ± 0.40 Mg ha -1 year -1で、同地域で報告された他の伐採後二次林のAGB回復速度(e.g. 2.70 Mg ha -1 year -1 )と比べ低かった。密集性マント被度が高いプロットでは、AGB回復速度が低下しており、回復速度が負になるプロットも見られた。さらに密集性マント被度の増加に伴い、新規加入、遷移初期種の相対成長速度、生存率が低下する関係性が見られた。本研究より、密集性マント被覆が熱帯林における二次遷移の制限要因になっている可能性が示された。また、熱帯二次林の生産性は必ずしも高いわけではなく、条件によってはAGB回復速度が大きく低下し、回復に長い時間がかかる危険性があることが示唆された。