| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-010  (Poster presentation)

木曽川の河道内氾濫原における淡水魚類の分布に影響する要因
Factors affecting the distribution of freshwater fish in the floodplain in the Kiso River

*北村淳一(三重県総合博物館), 加藤雅之(流域ネット), 野口亮太(流域ネット), 池谷幸樹(アクア・トトぎふ), 永山滋也(岐阜大学流域圏科学), 森誠一(岐阜協立大学)
*Jyun-ichi KITAMURA(Mie Prefectural Museum), Masayuki KATO(Environ. conserv. Net.), Ryota NOGUCHI(Environ. conserv. Net.), Koki IKEYA(Aquatotto Gifu), Shigeya NAGAYAMA(Gifu University), Seichi MORI(Gifu Kyoritsu University)

 木曽川の河口から26 kmから41 km地点の堤外地には氾濫原(河道内氾濫原)が発達し,大小様々な約150個の恒久的水域であるワンドやたまりが点存する.これらの水域は増水のたびに冠水し,その時には物理的な撹乱を受け,物理環境を更新する.さらに冠水時は生物にとっては,様々な水域での移出入の機会となっている.そのため,木曽川は,多様な環境傾度を示す氾濫原水域を持ち,冠水規模による水域内の淡水魚類群集の時空間的な動態を評価できる興味深い河川である.
 本研究では、2018年9-10月および2019年4-10月に,約100水域の淡水魚類相を調査し,各種の分布する環境要因を明らかにした.その結果、地盤高が高くて冠水しにくく,他の水域との接続数が少ない孤立性の高い水域に卓越して出現する種(オオクチバス、ブルーギル、モツゴ等)と、地盤高が低くて冠水しやすく,接続水域数の多い連結性の高い水域に卓越して出現する種(ニゴイ、ゼゼラ、イタセンパラ等)に別れる傾向が明らかとなった。
 さらに,コイ科タナゴ亜科魚類のイタセンパラのこれまでの出現記録をその特徴から整理すると,恒常的に確認される水域,2018年に生じた比較的大きな増水後に初めて確認された水域,過去に確認されているが近年確認されていない水域,恒常的に確認されない水域が認められ,それらの環境特性も異なることが示された。2018年に初めて確認された水域においては、そのほとんどで翌年度のイタセンパラの稚魚の泳出が確認されず、繁殖できていないことが明らかとなった。
 イタセンパラが恒常的に確認される水域については、他の種と比べて、より地盤高が低くて冠水しやすく,接続水域数の多い連結性の高い水域であることが解った。このことから、イタセンパラの稚魚期と産卵期の生息には、冠水によって環境が維持され,かつ本川や他のワンド・たまりとの連結性が保たれている水域が必要であることが示唆される。


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