| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-011 (Poster presentation)
環境条件による群集構造は、機能形質に従った選択過程によって決定される。土壌節足動物を支配する環境要因には、土壌の物理化学的なストレスや、植生を介した資源供給様式の違いなどが挙げられるが、これらの相対的な重要性については、あまりわかっていない。そこで我々は、肥沃地から貧栄養地までの異なる土壌条件を持つ地形傾度上に成立する落葉性天然林とカラマツ人工林においてトビムシ群集の種や機能形質の変化に着目した。天然林は地形に応じて植生が変化するのに対し、人工林はどの立地でもカラマツが優占する。したがって、リターの供給様式の違いが重要であれば、地形上の違いは人工林では観測されないだろう。一方、植生に関わらず地形によって群集構造が異なれば、土壌の理化学性がトビムシ群集に重要であると解釈される。調査は北海道足寄町の九大演習林で行った。環境条件をPCAで解析したところ、地形はトビムシのストレスに関わる土壌の理化学性、植生タイプはトビムシの餌資源である生産性や微生物バイオマスに関係していた。トビムシの機能形質にはストレス要因や資源利用に重要と考えられている、体長と生活形を用いた。トビムシの総重量密度はストレスが強い環境ほど大きかった。RDAによるvariation partitioningの結果から、トビムシの種、形質ともに植生ではほとんど説明できず、地形による土壌条件が重要な決定要因であった。優占種の種ごとの環境への反応をみたところ、環境条件12項目のすべてがいずれかの種と有意な相関を持ち、5つ以上の種の増減を説明できる環境条件はなかった。体長や生活形は土壌ストレスが強いとより大型、表層性個体が選択される傾向があった。体長の多様性はストレスが強いほうが高かった。特に個別の環境要因で見ると、休眠期の凍結融解頻度が機能形質と最も強い関係があり、活動期のトビムシ群集構造が冬季ストレスの影響を強く受けていることが示唆された。