| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-014 (Poster presentation)
本研究では、水田やビオトープ池などの半自然水域の水生昆虫を対象に群集集合規則の推定に向けた野外調査・実験を行い、種構成と機能群構造の解析を行った。
最大水深1 m以下、大型魚類の不在、樹冠開空度70%以上の条件を維持している湛水初期の水田等22ヶ所(EH)と、同じ条件をもち調査時まで2年以上湛水状態のビオトープ池等22ヶ所(LH)を、大阪府内を主とする14サイトからほぼ同数ずつ選定した。2015~2019年の初夏に各水域ですくい取り調査を行い、種構成および栄養段階(一次、二次消費者)・生活型(掘潜、腹ばい、しがみ付き、潜水型)に基づく機能群構造を調べた。
EH、LH間での水域あたり種数および現存量の差異について、サイトまたは調査年の違いをランダム効果とするGLMMの尤度比検定により評価した。水域間の種構成変異(β多様性)と機能群構造変異の大きさについては、多変量分散の並べ替え検定によりEH、LH間で比較した。
調査の結果、EH、LH総計でそれぞれ83種、122種がみられた。水域あたり種数は、一次消費者ではLHが有意に低く、二次消費者ではLHで高かったものの有意差はみられなかった。現存量は、一次消費者には差異がみられず、二次消費者においてLHで有意に大きかった。
β多様性は一次、二次消費者ともにLHで有意に大きかった。水域間の機能群構造変異については、一次消費者ではLHで有意に大きく、二次消費者では逆に低かった。これに関して、一時消費者ではEHで掘潜型が概ね優占群であり、二次消費者ではLHで掘潜型が明瞭な優占群であった。
以上の結果から、近畿の半自然水域における水生昆虫群集は、以下の集合過程をもつと考えられる。湛水初期の群集から時間とともに二次消費者の種数・現存量割合が増加すること、種構成は栄養段階によらず水域間で多様化すること、機能群からみれば二次消費者では水域間で単一の群集構造に収束するが、一時消費者では逆に構造が多様化することである。