| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-016 (Poster presentation)
火山噴火は大規模自然撹乱のひとつであり、陸域生態系の生物群集の成立過程において重要な役割を果たす。しかし、火山の噴火に対する動物の応答については、植物の応答と比べて研究が乏しい。特に、火山性撹乱後の節足動物群集の成立における噴火前植生の役割を研究した例は存在しない。鹿児島県の口永良部島では、2015年の大規模な噴火により、3種類の植生(広葉樹、クロマツ、スギの森林)で2種類の撹乱(火砕流と火山泥流)が発生した。本研究では、口永良部島において、植生タイプ間の火山性撹乱に対する地上に生息する節足動物群集の反応を比較した。その際、以下の仮説を検討した:1.噴火前の植生が撹乱後の地上徘徊性節足動物の群集構造に影響する、2.節足動物の群集構造に対する植生の影響は、弱い撹乱においてより顕在化する。地上徘徊性節足動物の総個体数は火砕流よりも火山泥流でより減少し、節足動物の種の組成は火山泥流後に大きな変化を示した。これらの結果は、火山泥流が火砕流よりも深刻な攪乱であることを示唆している。しかし、予想に反して、植生タイプ間の節足動物種の組成の差は、火砕流後よりも火山泥流後でより大きかった。落葉リターについては、火砕流後にはすべての植生タイプある程度残留していた。一方、火山泥流後には、スギ林の落葉リターは残留したが、広葉樹およびクロマツ林の落葉リターは完全に消失した。火山泥流後のこれら2つの森林タイプにおける落葉リターの消失が、植生タイプ間の節足動物種の組成の差異をもたらした可能性がある。本研究は、噴火前の植生の履歴が火山撹乱後の陸上節足動物群集に影響すること、および植生の履歴効果の大きさが撹乱の種類によって異なることを示している。