| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-017  (Poster presentation)

人里近くの知られざる哺乳類の世界:房総半島の大規模カメラ調査から見えてきたこと
What we have been finding from intensive camera trap survey in the Boso Peninsula?

*中島啓裕(日本大学), 矢島豪太(日本大学), 宮下直(東京大学), 横溝裕行(国立環境研究所)
*Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon Univ.), Gota YAJIMA(Nihon Univ.), Tadashi MIYASHITA(Univ. of Tokyo), Hiroyuki YOKOMIZO(NIES)

 近年,自動撮影カメラ(カメラトラップ)の性能の向上,価格の低下が進み,野生動物の研究に広く用いられるようになっている.本研究では,房総半島南部地域で継続実施している大規模カメラトラップ・プロジェクトの経過報告を行う.同調査地は,いわゆる里山が広がる環境であり,人と野生動物の関係を捉えるうえで最適な調査地である.これまでの取得されたデータから,いくつか興味深いことが分かってきた.列挙すると,①シカとキョンの分布・密度パターンが極めて似通っているのに対し,ノウサギは両種と対照的なパターンを示すこと,②これらのパターンは,植生帯の違い(落葉広葉樹林か常緑広葉樹林か)によってほぼ説明されること(シカ・キョンは前者,ノウサギは後者に多い),③食肉目において最も撮影頻度が高いのは外来種ハクビシンであること(ハクビシンの採食は鳥類への依存度が高いという報告もあり,在来生態系への影響が懸念される),④ノネコが非常に高い頻度で撮影され,里山生態系にも大きな影響を与えている可能性があること,⑤外来種ウシガエルが在来の食肉目や猛禽類(タヌキやサシバ)の重要な食資源になっているらしいことなどが分かってきた.発表では,これらの結果を定量的に示したうえで,今後のプロジェクトの可能性について議論したい.


日本生態学会