| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-018 (Poster presentation)
森林の多面的機能の発揮には、伐採による更新等適切な整備・保全が必要である。伐採の生物種への影響については、種や分類群により様々な効果が報告されている。ネズミ類は堅果類の散布者や肉食動物の被食者として重要で、害獣としての側面も持ち環境や農村社会へ与える影響が大きいといえるため、その個体数管理は公益的機能の維持が求められる森林管理の実施上重要であると考えられる。本研究ではカラマツ人工林における皆伐施業がネズミ類の生息状況に与える影響を明らかにすることを目的とした。
筑波大学山岳科学センター川上演習林において、皆伐地3カ所とその林縁部、林内に調査地を設定しネズミ類捕獲調査を行った。また林縁部と林内では巣箱調査を実施した。環境要因の把握のため、各調査地で毎木調査と植生被度調査を実施した。説明変数を調査地タイプ(皆伐地/林縁部/林内)、下層木本数とし、ランダム効果を調査月として捕獲調査と巣箱調査について種ごとにGLMMによる捕獲頻度/巣箱利用率モデルを作成した。
捕獲調査の結果、ヒメネズミ(Apodemus argenteus)、ハタネズミ(Microtus montebelli)、アカネズミ(Apodemus speciosus)が捕獲された。3種とも調査地タイプ間で捕獲頻度に明確な相違はみられなかったが、下層木本数についてはヒメネズミとアカネズミで正の効果、ハタネズミで負の効果が見られた。巣箱調査の結果、ネズミ類ではヒメネズミあるいはその痕跡(巣材)のみが観察された。ヒメネズミの巣箱利用率については林縁部で正の効果が見られた。
捕獲調査結果から、皆伐地によるネズミ類への影響は検出されず、下層木の量がネズミ類の生息に影響を及ぼしていることが示唆された。また巣箱調査結果からは、ヒメネズミにとって林縁部が休息場所としての高い利用価値を持つ可能性が示唆された。