| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-019 (Poster presentation)
近年、各地の湖沼において、ハスやヒシといった浮葉植物の過剰繁茂が問題となっている。宮城県北部に位置する伊豆沼では、ここ10年程の間にハス群落が急速に拡大し、湖面の70%前後に達しており、湖水の貧酸素化等の生態系への影響が懸念されている。一方、湖面にハスの葉が展開することによって、半水生のクモ類やハムシ類等が湖面へと進出しており、湖岸とは異なる独特の無脊椎動物群集及び食物網が形成されていると考えられる。本研究では、2017年7月及び9月に伊豆沼の中心付近のハス群落と南岸において、ニセキクヅキコモリグモとその餌候補を採集し、炭素・窒素安定同位体比による食性解析を行った。餌候補のグループとして、陸生昆虫、水生昆虫(ユスリカ科成虫、アメンボ科、セスジイトトンボ)、ハムシ類(イネネクイハムシ、ジュンサイハムシ)の3グループが想定されたが、7月は水生昆虫とハムシ類を安定同位体比で明確に分けることができなかったため、同一グループとして扱った。ベイズ推定を組み込んだ混合モデル(SIAR; Stable Isotope Analysis in R)による解析を行ったところ、7月に採集されたニセキクヅキコモリグモは、南岸及びハス群落内いずれにおいても、水生昆虫あるいはハムシ類に依存していることが示唆された。9月に南岸で採集された個体は、水生昆虫に強く依存していたが、ハス群落内で採集された個体は、ハムシ類を主要な餌としていることが示唆された。これらのハムシ類は、ハスやヒシ類を摂食することから、水生植物を生産者とする食物連鎖がニセキクヅキコモリグモを支える経路として重要であると考えられる。