| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-021  (Poster presentation)

一次生産要求量は栄養位置と転換効率から予測できるか?
Estimation primary production required from trophic position and trophic transfer efficiency

*高嶋あやか(龍谷大学), 近藤倫生(東北大学)
*Ayaka TAKASHIMA(Ryukoku Univ.), michio KONDOH(Tohoku Univ.)

 水産業の特徴は、その生産の大部分を野生生物の直接的な収奪が占めており、生態系サービスに依存していることにある。そのため、生態系を保全しつつ、漁業を行うための指標が求められており、一次生産要求量(Primary production required; PPR)はその一つになりうると考えられている。PPRは水産物の漁獲量を、その栄養位置と栄養転換効率を用いて一次生産に換算したものである。食物網の上位捕食者であるほど、同じ漁獲量でもPPRは大きくなる。水産資源の生産は植物プランクトンの光合成などの一次生産の上に成り立っているため有限である。そのため、PPRは水産業におけるエコロジカルフットプリントのようなものだとみなすことができるとされる。
 従来のPPRの算出には2つの問題がある。一つは種や環境によって異なると予測される栄養転換効率が0.1で固定されていることである。もう一つは生物種の栄養段階が平均値として与えられていることである。定量的な食物網データがない場合、この2つの問題を検討することはできない。しかし、定量的な食物網を得るには大変な労力がかかるため実際的ではない。
 今回、食物網のデータベース(Ecopath with Ecosim)から世界各地の35の食物網を用いて、従来の簡易的なPPRと食物網データから計算されるPPRの間にどのような違いがあるのかを計算した。その結果、食物網ごとに過大・過小推定の傾向が異なっていた。どのような要因がPPRの推定に影響を与えるかを検討したい。


日本生態学会