| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-025  (Poster presentation)

琵琶湖産スジエビの移動行動の多型に関連した生態的・遺伝的な構造の解明
The ecology and genetic structure of polymorphic migratory behavior of Palaemon paucidens in Lake Biwa

*邬倩倩(神戸大・院・人間発達), 矢井田友暉(神戸大・院・人間発達), 沢田隼(龍谷大・院・理工), 丸山敦(龍谷大・理工), 高見泰興(神戸大・院・人間発達), 源利文(神戸大・院・人間発達)
*Qianqian WU(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Yuki YAIDA(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Hayato SAWADA(Grad Sc Sci-Tech, Ryukoku U), Atsushi MARUYAMA(Fac Sci-Tech, Ryukoku U), Yasuoki TAKAMI(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

生活史の多型は多くの生物に見られる現象である。例えばサケ科魚類には、残留型と降海型といった同種内の異なる移動様式が存在する。移動様式の多型は、遺伝子型によって決定される場合もあれば、環境要因による場合もある。そこで、異なる移動様式を研究することは、生物の生態と特性をより深く理解することや、その意義の解明にも繋がる。本研究の研究対象である琵琶湖産スジエビ(Palaemon paucidens)は春から秋には沿岸に生息するが、冬季には多くの個体は深場に移動する(移動個体)。一方、冬季でも沿岸に残留する個体(非移動個体)も存在する。しかし、このような移動様式の多型をもたらす要因は不明である。そこで、その要因を理解するために、本研究では琵琶湖産スジエビ集団の遺伝的構造と生態学的な特徴の解明を試みた。
遺伝的構造の解析は、移動個体、非移動個体、および両者が共存していると考えられる集団を対象とし、マイクロサテライトを用いて遺伝的構造を調べた。その結果、移動個体と非移動個体の遺伝的分化は見られず、両者には遺伝的な交流があることが明らかになった。また、生態的な特徴や安定同位体比と移動様式の多型との関連について検討した結果、大型・成長良好なメスに比べ、小型・栄養不良なメスの方が移動しやすいことや、冬季の底層では栄養段階の高い餌源が均一に存在していることなどが明らかになった。以上の結果は,琵琶湖産スジエビは移動個体と非移動個体で構成された一つの遺伝的集団であり、異なる移動様式は、メスの成長、栄養、生殖状態に依存する可能性を示唆する。


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