| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-028  (Poster presentation)

隠蔽的捕食者の発見における2色型色覚の優位性の検証
Advantage of dichromatic color vision for detection of camouflaged predator

*西川真理(東京大学), 田中ちぐさ(日本モンキーセンター), 辻内祐美(日本モンキーセンター), 舟橋昂(日本モンキーセンター), Amanda MELIN(University of Calgary), 河村正二(東京大学)
*Mari NISHIKAWA(The University of Tokyo), Chigusa TANAKA(Japan Monkey Centre), Yumi TSUJIUCHI(Japan Monkey Centre), Takashi FUNAHASHI(Japan Monkey Centre), Amanda MELIN(University of Calgary), Shoji KAWAMURA(The University of Tokyo)

3色型色覚が一般的な狭鼻猿類に対比して,中南米に生息する広鼻猿類は,同一種内に色覚の多型があるユニークな存在である。多くの広鼻猿類は,長波長系色覚遺伝子(X染色体上にあるL/Mオプシン遺伝子)を複対立遺伝子として有するため,異なる型の対立遺伝子を持つヘテロ接合のメスは3色型色覚になり,オスとホモ接合のメスは2色型色覚になる。このように,同一種内での色覚多型現象の至近要因が解明されている一方で,各色覚型が優位になる状況ついては,未解明な点が残されている。2色型色覚は、隠蔽色の物体の発見に有利になることが報告されている。そこで,本研究では,隠蔽的な捕食者(ヘビ)を検出する状況下における2色型色覚の優位性について調べた。調査は日本モンキーセンターの放飼場で飼育されているボリビアリスザル(Saimiri boliviensis)を対象におこなった。観察対象のリスザルにピーナッツを与え,食べ残した殻に付着した口腔内細胞を採取し,M/Lオプシン遺伝子の塩基配列から各個体の色覚型を調べた。その結果,放飼場内には,2色型色覚の個体と3色型色覚の個体がいることが明らかになった。次に,放飼場内の林床に隠蔽模様のヘビ模型を設置し,ヘビ模型の半径5m圏内に入った個体,最初に警戒声を発した個体,および半径5m圏内に入って警戒声を発するまでの経過時間を記録した。発表では,ヘビ模型の発見効率の違いを色覚型間で比較し,2色型色覚の適応的意義について考察する。


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