| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-043  (Poster presentation)

スズメにおける胚の性特異的死亡の帰結:雛のコンディションと未孵化卵の生態学的意義
Consequences of embryo sex-specific mortality: offspring conditions and ecological function of unhatched eggs

*加藤貴大, 沓掛展之(総研大・先導研)
*Takahiro KATO, Nobuyuki KUTSUKAKE(SOKENDAI)

スズメPasser montanusの一腹卵の孵化率は6割程度であり、スズメ目鳥類の孵化率が約9割であるのと比べて、非常に低い。未孵化卵が生じると、造卵コストに対する繁殖上の利益が得られないので、非適応的な形質に見える。発表者らは未孵化卵が生じる生態学的要因と未孵化卵の生態学的機能を明らかにするため、秋田県大潟村において野外調査を実施した。巣箱を用いた繁殖調査の結果、平均して6割程度の卵が未孵化卵であり、そのほとんどで胚発生が見られなかった(非発生卵)。非発生卵の8割以上が受精卵であり、雄胚が発生早期に死亡していた(胚の性特異的死亡)。つまり、雄胚の性特異的死亡により未孵化卵が生じていた。雄胚の性特異的死亡を引き起こす生態学的要因は資源競争の強度だと考えられる。というのも、高繁殖密度下および巣場所競争の激しい営巣場所において性特異的死亡頻度が増加したからである。さらに未孵化卵の生態学的機能を調べるために、実験的に未孵化卵を巣内から除去する操作を行った。雛の体重と免疫力について、未孵化卵を除去しなかった巣と比較したところ、巣内に未孵化卵が存在し、かつ雛数が少ないほど雛の体重および免疫力が良好だった。このことは、未孵化卵に雛の体重や免疫力を強化する機能があることを示唆している。また、スズメは晩成性鳥類であることから、雛の体重や免疫力に対して親による給餌投資が関与すると予測される。発表では、未孵化卵の生態学的意義について、雛のコンディションや性特異的死亡による性比の偏りを併せて考察する予定である。


日本生態学会