| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-046  (Poster presentation)

捕食者にも同種メスにも発せられるウグイスの谷渡り鳴き:剥製提示実験の結果
Continuous song of Japanese bush warblers against predators and conspecific females: male response to models

*濱尾章二(国立科学博物館)
*Shoji HAMAO(Natl Mus Nat Sci, Tokyo)

ウグイスのオスは繁殖期、通常のさえずりのほかに長く続く鳴き方(谷渡り鳴き)をすることがある。この音声は、少なくとも一部の場合、タカ類やヒトの出現や、メスの鳴き声がきっかけとなって始まることが観察から知られている。しかし、谷渡り鳴きの機能はまったく不明であり、谷渡り鳴き行動に関する記述すらもなされていない。本研究では、谷渡り鳴きを行う際のオスの行動を記載するため、谷渡り鳴きが捕食者と同種メスのいずれに対してよく発せられるか、いずれに発せられる谷渡り鳴きも音響学的に差異がないか、谷渡り鳴きをしたオスがどのような行動をとっているかについて野外実験の結果を報告する。実験は新潟県妙高高原で2019年4月と6月にそれぞれ18個体と29個体のオスを対象に行った。それぞれのオスにハイタカ、ウグイスメスの音声再生を伴う剥製提示を行い、反応を記録した。ハイタカの提示に対しては21%、ウグイスメスの提示に対しては34%のオスが谷渡り鳴きをした(有意差はなし)。谷渡り鳴きをするオスの割合は、メスに対しては4月(11%)より6月(48%)に高かったが、タカに対しては時期による違いは見られなかった(4月11%、6月28%)。谷渡り鳴きの音響学的特性は個体変異が大きかったが、同一個体が両方のモデルに対して谷渡り鳴きをした場合、それぞれの谷渡り鳴きには音響学的に違いがなかった。谷渡り鳴きをしたオスは剥製に近づくことが多かった(対タカ:60%、対メス:88%;有意差なし)。つまり、ウグイスオスは捕食者に対しても同種メスに対しても谷渡り鳴きをすることがあり、鳴きながら接近することが多かった。これらのことは、谷渡り鳴きが単に同種他個体に捕食者の危険を知らせる警戒の機能を持つとすると説明し難く、この音声が同種メスに対する広告の意味を持つことを考えさせる。


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