| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-047 (Poster presentation)
捕食されることは死に直結するため、捕食回避行動は適応度に対して重大な影響を持つ。捕食回避行動をおこなっている間は採餌や交尾など他の行動ができないため、様々な内的、外的要因に応じて柔軟に行動を変化させることが有利になるだろう。メスにとって魅力的な交尾相手の求愛信号が存在するときには、メスは交尾行動への優先度が増し、捕食回避への投資量が減少するかも知れない。あるいは、メスを多く誘引する信号は捕食者もより引き付けるため、捕食回避への投資量は増加する可能性もある。そこで、タイワンエンマコオロギTeleogryllus occipitalisを材料に、メスにとって魅力的な鳴き声とそうではない鳴き声の存在下でメスの捕食回避行動がどう変化するかを検証した。捕食回避行動はオスの鳴き声のplayback中に人為的な空気刺激をメスに与え、それに対する反応を記録することで測定した。さらに、鳴き声の無い状況や複数の鳴き声がある状況でも実験をおこなった。その結果、メスの反応はその場からの逃走と跳躍、無反応に大別された。鳴き声の魅力はメスの捕食回避行動に有意な影響を与えなかった。しかし、状況が異なっていてもメスの行動は個体内では一貫しており、どの状況下でも跳躍しやすい個体や反応しにくい個体といったように分けられた。このことはメスの捕食回避行動に個性が存在することを示す。