| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-052 (Poster presentation)
一般に、動物の性格は、時間や状況の変化によらない個体毎の一貫した行動傾向で示され、その発現要因は遺伝と環境とされる。新奇探索性を示す性格は、移動分散の移動距離に関連する。絶滅危惧種のアオウミガメは移動距離に個体差があるため、移動距離の違いが新奇探索性の高さに関連している可能性がある。また、大胆さを示す性格の主な発現要因は捕食圧とされるため、移動性の高い個体の生息海域の捕食圧は可変的であると予想される。しかし、大胆さおよび新奇探索性を示す性格の違いが移動距離の違いをもたらすのかは明らかでない。そこで本研究では、亜成体アオウミガメを対象に、遺伝的由来は同じだが、移動距離と定置網による致死率(以下、死亡率)が異なる個体の大胆さと新奇探索性の違いを調べた。まず、移動距離が異なる2つの集団が生息する大分県間越海岸付近の混獲個体を用いて、大胆さと新奇探索性の性格を刺激提示実験で特定した。初めに危険な状況として手網を提示して大胆さを調べ、次に奇異な状況として鏡を提示して個体毎の新奇探索性を調べた。各刺激への反応時間を計測し、個体ごとの一貫性を確認して、性格を特定し、2つの集団の性格を比較した。同様の実験を、移動性が高く死亡率が低い岩手県大槌町の混獲で捕獲された個体で行い、性格を特定した後、大分県の移動性の高い集団と比較した。その結果、大分県に来遊する移動性の高い集団は、低い集団に比べて新奇探索性が高い傾向にあった。また、移動性の高い大分県の集団より、さらに移動性の高い岩手県の集団の方が、新奇探索性が高かった。次に、岩手県の死亡率が低い岩手県の集団は、死亡率が高い大分県の集団より、大胆な個体が多かった。このことから、移動距離は新奇探索性に関連するが、大胆さには関連しないことから、新奇探索性と大胆さを示す性格は異なるメカニズムで発現している可能性が示唆された。