| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-057  (Poster presentation)

貝を作るタコ:アオイガイの精子貯蔵方法
Sperm storage method in the paper nautilus

小澤大嗣(島根大学), *佐藤成祥(東海大学), 小野廣記(島根大学), 広橋教貴(島根大学)
Taishi OZAWA(Shimane Univ.), *Noriyosi SATO(Tokai Univ.), Hiroki ONO(Shimane Univ.), Noritaka HIROHASHI(Shimane Univ.)

カイダコ科に属するアオイガイは分泌物によって貝を作り、外洋を旅するタコの仲間である。本科における繁殖方法は独特で、雌の体重の10分の1ほどの矮雄が交接用に特殊化した交接腕の中に精子をため込み、雌と出会った際はこの腕を切り離して受け渡す事が知られている。切り離された腕はそれ自身が移動能力を持ち、雌の鰓付近に到達するが確認されているが、その後の精子貯蔵から受精までの過程がどのように行われているかは分かっていない。本研究では、卵保護を行っているアオイガイの雌18個体を解剖し、内部に貯蔵されている交接腕や精子の観察を行った。一般的にタコの精子貯蔵は輸卵管の途中に発達する輸卵管腺、その内部にある貯精嚢で行われるが、採集されたすべての個体で、輸卵管腺を確認することが出来なかった。一方、産卵後にもかかわらず、交接腕が鰓付近で確認されたのは僅か1個体だった。そこで、輸卵管と卵巣内で交接腕や精子及び受精卵が存在するか、蛍光核染色法により観察したところ、6個体から交接腕の断片が発見され、1個体から最大8本見つかった。また、精子や受精卵はそれぞれ15個体と13個体で確認された。この結果を踏まえて、本種の精子貯蔵戦略と矮雄の進化について考察する。


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