| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-060  (Poster presentation)

ニホンベニクラゲの生活環を逆転させる環境
Environment that can reverse the life cycle of Turritopsis sp.

*平野友靖(明治大・理工・電生), 近藤正博(明治大・理工・電生), 寳保和尚(明治大院・理工・電気), 井出光希(明治大院・理工・電気), 久保田信(ベニクラゲ再生研), 向井有理(明治大・理工・電生, 明治大院・理工・電気)
*Tomoyasu HIRANO(Sch. Sci. Tech., Meiji Univ.), Masahiro KONDO(Sch. Sci. Tech., Meiji Univ.), Kazunao HOBO(Grad. Sch. Sci., Meiji Univ.), Kohki IDE(Grad. Sch. Sci., Meiji Univ.), Shin KUBOTA(Inst. Reg. Biol. Turritopsis.), Yuri MUKAI(Sch. Sci. Tech., Meiji Univ., Grad. Sch. Sci., Meiji Univ.)

 ヒドロ虫綱のクラゲの成長過程では、まず受精卵がプラヌラ幼生になり、海中の岩の壁面や海底で植物の種のように根を張り若いクラゲを生み出す機能をもつポリプ幼体に成長する。その後ポリプ幼体から若いクラゲ成体が遊離し、成熟する。ニホンベニクラゲ (Turritopsis sp.) は以上のような通常のヒドロ虫綱が持つ生活環に加え、クラゲ成体時に外敵や環境の変化など何らかの生命の危機に陥ると「肉団子化」と呼ばれる形態変化を起こし、基質上に張り付いたのちに走根を伸ばし、ポリプを発生させてクラゲを生み出す特殊な生活環を持つことが知られている。この形態変化からは細胞死や細胞分化を誘導する因子の発現が予想される。先行研究ではニホンベニクラゲの体液成分がヒトがん細胞のアポトーシスを引き起こすことがわかっており、創薬や再生医療への応用の可能性が期待されている。
 しかしながら、ニホンベニクラゲは人工的な飼育自体が困難であり、生活環を逆転させるための環境要因が明確にされていない。そのため本研究では、ニホンベニクラゲの長期飼育と生活環逆転を誘導する条件を検討する。
 研究開始当初の飼育条件では、クラゲ成体を肉団子化させ、走根・ポリプの成長を誘導することはできたが、ポリプからのクラゲ芽の発芽が達成できていないため、「ベニクラゲ成体からの肉団子化」と、「肉団子から走根・ポリプの成長」の2つの変化についてさらに飼育条件の検討を行った。まず肉団子化の段階において、与える餌の量やクラゲ成体の成熟度について条件を分けて変化を比較したところ、栄養状態が良く、成熟度の低い個体ほど、肉団子化の後、走根が伸びやすいことが確認できた。また、走根・ポリプの成長においては、飼育環境内に入れる人工海水の水深、水温などについて走根とポリプの変化を観察したところ、水深が浅い条件では走根がよく伸び、また水温を急激に上昇させることでポリプの発生を促すことが確認できた。


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