| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-062 (Poster presentation)
生物は、生化学反応から形態、行動に至るまで、さまざまなレベルで組織的に統合されている。一方で、統合のあり方や程度にはバリセーションがある。そうしたバリエーションは、不安定性によるゆらぎと、表現型可塑性や遺伝的多様性による、機能の分化を伴う形質の多様化を潜在的に包括している。
形態の統合性についての関心の歴史は古い。統合性は機能の分析を通じて明らかにすることができるが、機能がよく分からない段階では、形態バリエーションのパターンから、統合のルールやその機能を類推する。そのため、複数形態部位のバリエーションとその間の関連度や関連パターンから、形態統合の生物学的なルールを見出す研究が行われてきた。現在、幾何学的形態計測法が従来的な方法に替わり、個体発生過程、あるいは進化過程における、形態の統合性や機能性に関する研究に用いられている。幾何学的形態計測法において、形態統合性を分析する幾つかの方法が考案されている。異なる発生過程、異なる系統、異なる環境の地域集団、あるいは多型が発現した集団内の異なる型で、形態統合が共通のルールによるか、あるいは異なるルールによるかを検討したいことがある。しかし、私は、現状の方法論が不十分と考える。
Partial Least Squares (PLS)は、異なる形態部位間の形の相関性を調べる方法で、2つの部位の形態成分の共分散行列の特異値分解を経て、部位間の関連性の高い形態変異の特徴を抽出する。部位間の形態変異の関連性は、統合性を示唆するものと解釈され、その統合性の機能や意味が論じられる。私は、この論理の枠内で、複数のサンプル群間で形態統合の比較を行う方法の検討を行う。