| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-068 (Poster presentation)
伊豆諸島は本土の比較的近くに位置するにもかかわらず地史的には海洋島で多くの固有植物分類群が分布し植物の種分化を解明していく良いフィールドとなっている。この伊豆諸島における植物の種分化を引き起こした重要な要因として訪花昆虫相の変化が指摘されている(eg. Yamada & Maki, 2012)。これまでの研究の多くは訪花昆虫を膜翅目や鱗翅目の一方の種群を対象とする研究で,昼行性・夜行性の両方を訪花昆虫として使い分けて利用する植物での研究はほとんどない。本研究では,本土で訪花昆虫として夜行性の鱗翅目を主とし補償的に昼行性昆虫を利用していることが報告されている広域分布種キキョウ科ツリガネニンジン類を用い,昆虫相が大きく変化する島嶼において訪花昆虫相とそれに関わる開花習性にどのような分化が見られるのかを明らかにした。調査地としては本土との距離の異なる伊豆諸島の2島(三宅島,伊豆大島)と比較のために本土近接型離島の近畿地方の志摩諸島1島(神島)を設定し,2017〜2019年終日ビデオ撮影による訪花昆虫相とその行動解析を行い有効な訪花昆虫相を決定した。また繁殖特性として開花時間の調査を行った。その結果,本土近接型離島の神島では既報と同じく夜間の鱗翅目が有効な訪花昆虫相であったのとは異なり,伊豆大島,三宅島ともに昼行性の膜翅目の訪花が多く観察され,夜間の鱗翅目の訪花頻度は著しく低いことが示され,夜行性から昼行性訪花昆虫へのシフトが認められた。開花開始時間は伊豆諸島では日中から開花が始まり,本土近接型離島ではより夕方から開花開始する傾向が認められ,これは訪花昆虫相の分化と対応しているものと考えられる。