| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PA-070 (Poster presentation)
現在、草原は過去に例がないほど急速に減少しており、草原性希少植物の保護が急務である。希少種の分布把握に有望なのがリモートセンシングである。これまで主流だった人工衛星・航空機と比べ、近年急速に進歩しているドローンは低い高度からの撮影が容易であるため、サイズの小さい草原性植物の種・個体レベルでの判別に有望である。しかし、ドローン画像による植物種同定の可能性については賛否両論がある。そこで本研究では、視認性が高い草原において、ドローン画像から植物種の花を検出することを試み、希少植物の広域分布把握に向けた有効性を検討した。また、ドローン画像から植物多様性の高い草原が判別可能であるかも検討した。
長野県菅平高原の草原において、ドローン(Inspire 2、DJI社)を用いて調査した。植物種検出のために、3地点に約4×6 mの区画を設置し、2019年4~9月に3回、高度約5~50 mから動画・静止画を撮影した。画像に含まれるオキナグサ・マツムシソウ・コウリンカ・エゾリンドウ・ワレモコウ・アキノキリンソウの花を自動判別するための色相・彩度・輝度の特徴を手動で探索した。植物多様性判別のために、15地点に1×20 mの区画を設置し、高度10~50 mからの動画撮影と維管束植物数の調査を2018年7・9月に行なった。一部の区画では先行研究の植物種数を用いた。撮影した動画はパノラマ処理した後、区画内の一辺約80 cmの正方形画像30枚についてJPEG圧縮後ファイルサイズを求め、それを画像指標とした。
6種のうち4種については、高度5mからの静止画を用いた際に50~100%の花を自動判別できた。高度が高いほど検出率は下がり、30mまではある程度の検出ができた。また、植物種数が多いほどJPEG圧縮後ファイルサイズは大きくなった。この効果は、日照が無い時ほど、撮影高度が高いほど、明瞭であった。