| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-073  (Poster presentation)

メマツヨイグサの開花特性とパフォーマンスの地理的変異 【B】
Geographic variation in flowering traits and performance of evening primrose 【B】

*大嶋希美, 工藤岳(北大・環境)
*Nozomi OSHIMA, Gaku KUDO(Hokkaido Univ.)

地理的に広範囲に分布する植物において、繁殖戦略や形態特徴に場所間で変異がみられることがある。これらの変異については、利用可能な送粉者との相互作用といった生物学的な要因や、気候などの非生物学的な要因の両方から研究されている。本研究の対象種であるメマツヨイグサ(Oenothera biennis)は可変性2年生草本であり、夕方から開花する一日花をつける。また、日本では明治期に移入し広く分布する。本研究は、地理的に広く分布する外来種において、侵略後の繁殖戦略や形態特徴が緯度分布に沿ってどのように変化するかを明らかにすることを目的として、野外調査を行った。 野外調査は、北海道石狩市、茨城県ひたちなか市、鳥取県米子市の3地点について、2019年7月から10月にかけて行った。調査項目は、(1)花および植物個体の形態的特徴の比較、(2)生産した果実数の計測と種子数の推定、(3)開花フェノロジーおよび開花時間の測定を行い解析した。この結果、まず花サイズは高緯度になるほど大きくなった。一方、個体サイズは海岸地域で小さくなった。また、生産した個体あたりの種子生産量の推定値は、各地域内で開花開始時の個体サイズと正の相関があった。また個体の頂芽の花数は個体サイズに依存したが、個体の総花生産数は個体の開花サイズに依存しなかった。さらに、開花フェノロジーは高緯度地域で早まる傾向にあり、一日の中の花の開花開始時間も高緯度地域で早いことが明らかになった。 以上の結果と気象条件から、まず各地の形態的な特徴は風力などの気象条件に応じて変化していると考えらえる。また、高緯度地域では成長可能な時間が短いため、開花フェノロジーが前倒しかつ短くなると考えられる。生育可能な期間が限られるため、総種子生産量は頭打ちになる。一方で、夜間の送粉者だけでなく夕暮れ時の送粉者も利用するために、花のディスプレイサイズの増加や、開花時間の変更などが観察されるのではないかと考えられる。


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